FEMINGWAY 〜有限要素法解析など構造設計にまつわる数理エッセイ〜

第33話 骨組力学教育の功罪

今回は、のっけから問題集のようなものでスタートして恐縮するが、下記の問題をちょっと考えていただきたい。明確な理由とともに即座に解答できる読者は既に充分、構造力学のセンスをお持ちの方と推察する。

第1問
梁理論は断面不変の仮定から成り立っているが、もちろん実際の梁断面では極わずかであるが、変形後の断面形状は変化する。単純箱桁に鉛直荷重がかかったとき、変形後の断面形状は下のア、イのうちどちらが正しいか。
注)図は変形状態を極端に表示している。以下、同様。
 

33-a

第2問
次の図のように中央に載荷された単純円弧箱桁の中央部任意断面の変形状況を正しくあらわしているのはどれか。但し、ここでは、そりは無視および断面形状は不変とする。
 

33-b

第3問
次の図のように中央に載荷された重ね梁の撓み状況を正しくあらわしているのはどれか。
 

33-c

第4問
今、U 字型の断面を持つ桁があるとする。下向き鉛直荷重が予想される単純梁としてこの桁を使用する場合、下の3つの中でどれが工学的に最適な発言か。ここでは、ひとまず、断面を横にしたコ型断面は考えない。
 

  • U 型断面として使用した方がいい。
  • 断面をひっくり返した Π 型断面とした方がいい。
  • U 型、Π 型どちらでも工学的には同じである。

33-d


第1~3問は初等的な構造力学の知識さえあれば分かるはず。第4問は薄板構造で構成される梁を対象とする薄肉梁理論の知識が必要なので、その知識がなければ、ちょっと考えてしまうかもしれない。

定量的にはともかく、定性的に上のような問題を理解できる能力を力学センスというのであろう。構造設計者たる者、上の問題を有限要素法プログラムの出動を願ってでないと分からないとなると少し問題である(なお、解答は次回に掲載予定)。

力学センスは大学等の教育機関で実施されている伝統的な骨組構造力学の修得で養われることに異論はないであろう。だから、構造力学、材料力学といった講座は将来、構造設計に携る学生さんにとっては必須科目だったのである。

ところが、である。コンピュータの普及を境にして、新たな課題が出てきているように思われる。相変わらず古典的な骨組構造で終わらす大学での力学教育と、有限要素法が大衆化してどんどん利用されていく実社会との乖離が大きくなっているように思うのは筆者だけではないであろう。

構造設計が関係する部門の中でも、特に、建築、土木といった元々、対象とする構造形態に骨組要素が多い分野では構造力学の知識が骨組構造で止まっている人が多い。中には、学生時代に平面構造しか相手にしなかったせいか、3次元構造になった途端、梁部材の主軸方向の概念に戸惑う人すら見かけることがある。プレート/シェル構造ともなると何を言わんかである。これすなわち、教育現場と設計現場の需給関係のミスマッチである。

一方、逆のミスマッチもある。以前、建設分野の業界紙を読んでいたら、ある国立大学の先生が、「大学では何万要素ものメッシュを張って有限要素法を駆使している学生もひとたび社会に出ると、昔ながらの梁理論の設計に従事させられる。これでは技術の進歩がない」と嘆いておられた記事に出会ったことがある。

この問題、どこかでけりをつけないといけない問題であろう。

2005年6月 記

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