FEMINGWAY 〜有限要素法解析など構造設計にまつわる数理エッセイ〜

第113話 チャンネル型断面梁の力学 その3
                - ねじりの数理

梁の曲げ理論、曲げねじり理論における各物理量の類似性について前回言及してきた。しかし、両理論の主役変数であるたわみとねじり角では、全く違う姿を見せることも最後に述べておいた。今回、その違いについて話すことにする。と、その前に、今一度類似性の追加項目を下に追記しておく。

梁の曲げ理論と曲げねじり論の比較表2

さて、今まで曲げねじり力学における固有の物理量に関しては話してきたが、梁の曲げねじり作用についての支配方程式は一切話してこなかった。換言すれば、横断面に視点を据えた話しばかりで、梁軸方向の物理に関しては何ら言及してこなかった。それをここでしようというわけである。これすなわち、曲げねじり力学を支配する微分方程式を求めることである。

一般に梁材がねじり変形を受けるとき、内力の一つであるねじりモーメントTは次の二つのねじりモーメントから構成されることになる。

ここに、Tsはサンヴナンのねじりモーメントであり、Tωは前回の比較表1に出ていた2次トルクである(これをワグナーのねじりモーメントと呼ぶ人もいる)。後者は曲げねじりモーメントから派生するものである。

式(1)右辺の各ねじりモーメントをその変形関係式で表現してみれば、左右を反転して次のとおりになる。

左辺第1項は、よく知れたサンヴナンのねじりモーメントの関係式であり、第2項は、前回の比較表1にあるTωと今回の比較表2にあるMωの関係式から出てくるものである。

 

微分方程式の解法ということであれば、上の式(2)を対象にすればいいのであるが、曲げ理論での式と比較するため、ここで、さらに一歩進めることにする。

図1 トルク荷重を受ける梁微分素の釣り合い

図1 トルク荷重を受ける梁微分素の釣り合い

図1にあるように、梁の微分素に働くトルク力の平衡状態から、式(3)の関係式が容易に分かる。但し、微分素の軸はせん断中心を通っているとする。Tはせん断中心軸回りのねじりモーメントであり、trqはやはりせん断中心回りに作用するねじりモーメント荷重の単位長辺りの強度をいう。

それで、式(2)を微分して、式(3)を導入すれば、ねじり角に関する4階常微分方程式が式(4)のように得られる。

上式を、曲げ力学で出てくる撓みに関する下記の微分方程式と比べると、

一目瞭然、同じ4階常微分方程式といえども、式(4)には、2階微分項がある。式(5)の解式が多項式で済むのに対して、式(4)では双曲線関数が入ってくる複雑な解式となるのである。あれだけ、類似性を持った物理量を持つ両理論が、理論の基本である変形量が全く違う顔を見せる面白い現象である。

 

それでは、曲げねじり理論の方の解式とはどんなものかを紹介する。ここでは、式(2)を下のように変形して解いた結果を示す。

そして、その解は次のようになる。

A0~A2は、未定係数で、梁両端の境界条件から決定されるものである。一つ面白いことは、両端が単純支持の場合、θ=Mω=0 であり、このとき、A0=A1=A2=0となって、このケースでは、単純ねじりの場合の解となることである。これは、そりが全く拘束されないねじり問題というわけである。

 

上で導入したパラメータβにスパン長Lを掛けた無次元量βLは、梁のねじり力学ではちょっとしたキーとなる量である。今まで薄肉断面のことをテーマにして第111話から続けてきたが、あくまでも開断面に絞った話であった。

ここで少し、箱桁のような閉断面のことにも触れておく。開断面、閉断面の様相をパラメータβLが示してくれる。同じスパンの梁ならば、開断面に比べて桁違いにねじり抵抗係数Jが大きい閉断面では、必然的にβLが大きい値となる。

通常、あるパラメータを持つ工学式が得られると、そのパラメータの値を大小の極端値に設定すれば、ある特別なケースでの式を得ることをわれわれはよく経験がするが、式(7)では、そうはいかないことを思い知らされる。βが大きい値では、双曲線関数はたちまち無限大になり式が破綻してしまう。これは、何を意味するかと言えば、式(7)は、そもそも閉断面の場合には成立しない式なのである。もちろん、閉断面の場合でも、ねじりを受けると、断面のそり現象は起こる。しかし、そのそりは小さくて、その影響は重要でなくなってくるのである。閉断面では、あくまでも単純ねじりが主役なのである。これは、充実断面でも同じことである。

単純ねじり力学における開断面と閉断面の本質的な相違を、数学的な解説で言えば、それは前者が単連結の面であるのに対して、後者は多重連結の面だ、ということだ。物理的には、開断面では肉厚両表面で大きさは同じで向きが反対のせん断応力が作用していることを、閉断面では大きさも向きも同じせん断応力が作用していることを意味しているのである(図2)。

図2 単連結断面と多重連結断面

図2 単連結断面と多重連結断面

開断面では、図1左の単純ねじりに加えて、同図右のように分布するせん断応力が発生する。これが原因で発生するねじりモーメントが式(1)のTωなのである。

2017年4月記

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