第2話 設計者、コンター図に困惑す
[ユーザの声]
ソリッド要素モデルの一部に等分布荷重を掛けて(図1左)、その載荷面直下で対応する応力成分のコンター図を描いたところ、右図の矢印先にあるように応力分布のピークを2か所見る。過去、載荷面中央でピークを持つ応力分布しか経験がないという。この違いは?

ずっと以前、「有限要素法よもやま話」の第72話「それは、ちょっと?」で応力コンター図(カラーマップ図)が見せる騙しの面を紹介したことがあるが、今回はその追加版のような話である。
この問題を考察するに際して、圧縮力を受ける単柱の簡易モデルに置き換えて話を進めたい(図2)。これでも問題の本質点は変わらない。要するに等分布荷重直下領域の応力分布を見る問題と捉える。

さて、応力ピーク点が1か所ないしは2か所という問題は、実は、全く力学的な話題ではないのである!力学的な話は後で少し記すとして、それでは、どうしてこういう分かれ方になったかの理由から話したい。理由は2つある。
まず、1つ目の理由だが、これはメッシュ模様の違いによる。図3左を見てほしい。柱断面の縦方向が不等分割されたメッシュでの応力コンター図である。このメッシュが均等分割された結果が同図右のコンター図である。すなわち、前者のメッシュでは応力ピーク点が2か所となり、後者のメッシュでは応力ピーク点が1か所となっているという訳である。

ちなみに、等分割メッシュをもっと高密度メッシュにした結果を見れば、図4の応力コンター図となる。このメッシュでは、もはや応力ピーク点が消失してしまっている。教訓の1つとして、FEM解析のおける応力コンター図はメッシュ状態に依存するということを知ってほしい。

次に第2の理由だが、実はこちらの方が大きな理由である。すでに図4でそのことを表現し始めているのだが、そもそも違いが僅差でしかない物理量のコンター図を描けば、こういうことになるという現象である。図5を見てほしい。

これは、図3右と同じ結果を各要素の積分点位置での応力値をサークル図で表現したものである。円半径がその大きさを表現している。一目瞭然、目視レベルでは、同一の値と判断できるのでは。
考えてみてほしい。理論的には、qの強度の等分布載荷された載荷面での応力値がqでないと、作用・反作用の力学の大原理に背いてしまう。図5はそのことを如実に物語っている。ところが、図3でのコンター図では、実用的には無視できるようなわずかな応力値の違いをレベル差として捉えて描画してしまう結果なのである。通常、コンター図作成のアルゴリズムは、対象数値の最大値と最小値の差を何等分化して表示するのがスタンダードであろう。図3、4は数値計算した結果の誤差のような違いを持つ断面内のMIN/MAX値を10分割して描画した結果なのである。
ここで、図6を見てほしい。このコンター図は、対象数値が僅少さしかないので、わざとレベル数を2に設定して描いたものである。

事程左様に、コンター図というのは、場合によってメッシュ模様と表示レベル数に影響されるということを肝に銘じておかなければいけない。本話での「場合」とは、分布している物理量が誤差の違いのように僅少差である場合である。
筆者が、構造解析に携わった55年ほど前の時期、最初は、ほとんどが骨組構造解析であったので、コンター図など何の縁もなかった。やがて、時代の流れでFEM解析に接触することになると、必然的に板やソリッド構造の連続弾性体の構造力学を対象とし、そのポスト処理に悩まされることになった。当時は、今のようなCG技術は期待すべくもなく、せいぜい汎用コンピュータに繋がったプロッターに主応力図を描くのがせいぜいであった。
FEM解析の結果をパソコン上で気軽に応力評価できる現代、見栄えが重視されて、カラーマップのコンター図が重用されている。だが、「コンター図は人を騙す」面があること、今一度認識してほしい。できたら、「有限要素法よもやま話」第72話の再読を勧めたい。
2026年6月記
