FEMINGWAY 〜有限要素法解析など構造設計にまつわる数理エッセイ〜

筆者プロフィール

原田義明(はらだよしあき)

1949年、大阪市に生まれる。
振り返れば、有限要素法(FEM)との長い付き合いの人生であった。
 
志望大学の受験に失敗し、子どもの頃から憧れていたマンモスタンカー設計のエンジニアへの道を絶たれる。人生最初の挫折であった。
 
海(造船)から陸(土木)への針路変更で、地方大学の土木科に在籍していた1971年春、今で言うインターンシップで阪神高速道路公団の建設事務所に行ったのが、FEM解析との初めての邂逅だった。
 
FEMとは縁のなかった大学院時代、FEMへの思いが断ちがたく、さらに1年間勉強するため大阪の大学へと移る。
 
1976年、建設コンサルタントに入社するや、いきなりFEMプログラム開発の幸運に恵まれる。これがFEMプログラムの開発デビューである。
 
1981年、海外製FEMソルバー用プリ/ポストプロセッサの開発・販売を始めた大手情報処理会社に転職する。本格的に、FEMソフトと向き合う技術者人生の嚆矢であった。
 
1996年、独立して、FEMソフトの専門会社(株)ホクト・システムを創業する。われ46歳にして、初めて汎用型FEMソルバーを開発する。
 
2008年、還暦を前に中咽頭癌を患い、3ヶ月間入院を余儀なくされる。これを機に、社長を引退し、相談役に退く。
 
2010年、全くの専門外であった光ファイバー導波路のFEM解析プログラムの開発を依頼される。老身ながらな開発ができたことに、われちょっと、「どや顔」となる。
 
2014年、M&Aによるホクト・システムの閉鎖により、土木系ソフト専門会社の顧問(非常勤)に就き、現在に至る。
 
【今に至る人生観】
不運、不幸との遭遇が次のステップでの踏み台となり、人生、まったく、「人間、万事塞翁が馬」である。

読者からの寄せられたコメント

  1. 和久智裕 より:

    大阪寝屋川の和久と申します
    ガウス積分の記事わかりやすく助かりました。数値流体力学が専門で応力解析はずっと苦手意識あります。記事拝見しガウス積分の積分点の意味わかりいままでよりは少しハードル低く見えました。3次元のテトラ要素の積分点への拡張の理解がつぎの私のハードルです。
    私ちょうど46歳です。ご自身でfemプログラムで独立との略歴拝見して世の中にはすごい人まだまだいらっしゃると元気いただきました。

    • Yoshiaki Harada より:

      和久さま
      お便りありがとうございます。46歳ですか。まさに私がFEMの商品コードを開発した年でした。
      学生時代からその年までずっと汎用機上のプログラムで戦ってきた旧型人間で、当時日本でも
      浸透しつつあったWindows搭載のPCの登場で危機を感じ、会社独立と併せて思い切ったことを
      やった時代でした(笑)。
      流体力学が専門とのこと。構造屋の私から見れば、少々うらやましい分野ですよ。
      本四連絡橋計画があった時代背景のもと、橋梁設計にあこがれて自然と固体力学方面に道を
      進めましたが、力学現象の面白さという点では、流体力学の比ではないと常々感じていましたよ。
      和久さんもまだまだ勝負のできる年齢と思いますので、頑張ってください。
      小生、今もFEMプログラムに携わっています。
      以上

      • 和久智裕 より:

        原田様

        今日、関西大学の田中先生にcad の前処理をAIで出来ないかという無茶な相談しにいきました。そこでホクトシステム 原田様の名前聞いて あ ブログ の 原田様と思い 偶然の出会いに驚きました。
        またご縁あればお会い出るかもと思っています。 
        腹立って潰れろと何度も思う会社ではありますがまだサラリーマンしています ソフトウェアクレイドルという会社です。 
        CFDでも一次要素の形状関数つかっています。でも応力よくわからないです。溶接が流体と応力両方知識必要で応力解析今勉強しています。

        • Yoshiaki Harada より:

          和久さま
          お便りありがとうございます。おそらく旧東洋情報システムの縁から田中先生から私の名前が出たのでしょうか。
          ソフトウェアクレイドルといえば、流体解析ソフトですね。幸か不幸か、分野が違っているので、今まで競合しな
          かったですね(笑)。溶接の解析とは、また難しいことをやっていますね。

  2. Kazunari Kotajima より:

    株式会社アドウィンという、工業技術系教材の開発販売をしている会社の答島一成(こたじまかずなり)と申します。

    テンソルのことが以前から理解できなくて、昔、買っていたのに積読で済ました本で刺激を受け、第7話 ベクトルとテンソルを発見し、読ませていただきました。疑問氷解というわけにはいきませんでしたが、反変ベクトル、共変ベクトルという概念が登場し、ベクトル解析、テンソル解析につながってくるというくだりは歴史的な発展を見てみると少しは分かってくるのなという感想を持ちました。

    ベクトルの概念や座標系の概念なども具体的な模型などを作れば初心者にもイメージしやすいのかなとも思いました。

    そして、
    第13話 坂の上の雲を見つめた一人」の文章まで興味深く読ませていただきました。

    著者プロフィールを拝見すると私と同じ生まれ年。原田様、よもやま話を有難うございました。

    私は呉高専で機械工学を学び、その後工場の自動化推進担当として電気やマイコン制御も学んできました。
     現在AIの勃興期を迎えており、面白いことがたくさんあり、日々、刺激を感じています。しかし、数学に関しては入門段階で挫折者をたくさん出しているので、大変勿体ないことだと思っています。今後何かでコラボできることがあれば、面白いと考えています。

    今後とも、面白い記事を期待しています。有難うございました。

    • Yoshiaki Harada より:

      答島さん

      お便りありがとうございます。

      ベクトル数学の話題は、数学そのものよりも生まれるまでの歴史過程が非常に面白いですね。

      学校教育で習う3次元ユークリッド空間での幾何ベクトルは、若者には魅力に感ずるようであり、つい最近の朝日新聞の投稿欄で、その魅力を語った2人の若人の記事を見ました。

      テンソル数学までいくと、やはり理解するに努力が必要のようですよね。しかも、どうしてもテンソル表現しないといけない局面に出くわす状況であれば、刻苦勉励も仕方ないのでしょうが、身近な物理問題を扱う工学系部門では、ベクトル的に処理出来ることが多く、テンソル学の入り口で逃げてしまうのでしょうね?

      私が所属していた応用力学分野で一例を挙げれば、曲面構造物を扱う場合です。これをまともに数学的に対処する場合、その道具としてやはり曲面を扱う数学、テンソル学を必要とします。

      しかし、こんな高度なアプローチをとる者は、ごく一部の研究者だと想像します?厳密性よりも実用性を重視する工学系部門では、たいていは、近似的に平面要素の集合体として曲面構造を扱うことが多いと思います。

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