FEMINGWAY 〜有限要素法解析など構造設計にまつわる数理エッセイ〜

第6話 ガウスの数値積分法の続き

前回、話した積分公式では積分範囲が-1から+1という無次元の変数域であった。これは現在の有限要素法で一番よく利用されているアイソパラメトリック要素での曲線座標系とも一致し、まことに好都合である。

ところで、実際の構造物は空間での幾何座標をもっており、それが分割された各要素も当然、長さの次元を持つ座標を持っている。そこで、実際に要素の面積分、体積分を求める際には幾何座標系(X,Y,Z)とアイソパラメトリック要素で使用される無次元の曲線座標系(ξ,η,ζ)との間の変数変換が必要となる。ここで登場するのがドイツの有名な数学者ヤコビ(Jacobi)の名から取ったヤコビアンである。日本名では関数行列式と呼ばれている。面積分の場合で言えば次の式のようになる。

ヤコビアンの登場で、具体的な関数の積分公式は下式のように変更される(例は面積分の場合)。ヤコビアン自身も関数の中に取り込まれるのである。

ところで、面積、体積はこのヤコビアンが正値でないと求められないのである。3節点の三角形要素ではヤコビアンは面積の1/2の値となる。それゆえ、どんな歪んだ三角形であっても要素剛性マトリックスでの積分は求まる。しかし、四角形ではそうはいかない。極端に形状が歪むと、ヤコビアンがゼロまたは負値になったりして計算不能になってしまう。

図6‒1 ヤコビアンが負となる極端 に歪んだ要素

図6‒1 ヤコビアンが負となる極端 に歪んだ要素

構造物の形状が非常に複雑になってくるとメッシュ分割の結果、知らず知らずのうちに図6-1のような要素を作ってしまっているケースが時折ある。

これではヤコビアンは正値でなくなる。有限要素法のソルバーをラニングさせた時、剛性マトリックス作成不可というメッセージで計算が止まってしまうことがあるが、それは上のことが原因である。

2次元問題の場合は目視で要素形状が確認できる上、修正も比較的簡単だが、3次元問題では目視で発見もしにくいし、修正も非常に困難なのでメッシュ生成には慎重を要する。

2000年11月 記

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