FEMINGWAY 〜有限要素法解析など構造設計にまつわる数理エッセイ〜

第97話 アーチの数理 付録 – 円弧アーチ

本シリーズ初回で、曲げモーメントが一切出現しない理想的なアーチとして極限の断面を持つ放物線アーチのことを書いた。このアーチは実際的なものではなく、あくまでも仮定が入った数理的に誘導されたアーチである。そんな例として、もう一つ紹介しておこう。それは、前話の最後に出てきた2 ヒンジ円弧アーチの延長である。ライズが円弧半径と同じという、半円形のアーチがそれである。この半円形アーチに本シリーズ第1 話に出てきた図1(c)のタイプの荷重が載荷されると、アーチ全長、曲げモーメントが発生しない結果をもたらす。但し、一つ前提が入いる。それを理解しやすいように本シリーズ第2 話で出てきた式(3)を再び下に記しておく。

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上の積分計算の分子第2 項は、第1 項に比べて小さいことが経験上分かっており、この項を無視することが前提である。すると、外圧タイプの等分布荷重では、上式分子にある積分第1 項内で差を取る両項は等しいため、水平反力Hはゼロとなり、アーチ任意点での曲げモーメントもゼロになることが、付録に添付した公式から容易に理解できるはず。

 

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円弧アーチに等分布荷重が掛かる問題の数式は、結構煩雑な計算式となり、教科書類にもなかなか掲載されていないように思う。そんな中で、土木学会編集の“構造力学公式集(1991 年発行を最後に絶版となっている)”には掲載されているのだが、残念ながら掲載式に怪しいところがあるようだ。どこにミスがあるか指摘するのも厄介な作業なので、筆者が独自に誘導した公式を以下、付録として掲載しておく。構造設計者の便宜に供することができれば幸いである。

付録-1 2ヒンジ円弧アーチの水平反力を求める基本式

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付録-2 円弧軸上等分布荷重載荷の2 ヒンジ円弧アーチ

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付録-3 水平線上等分布荷重載荷の2 ヒンジ円弧アーチ

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付録-4 外圧力載荷の2 ヒンジ円弧アーチ

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2015年8月記

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